摂食嚥下のオンラインリハビリテーション医療―訪問スタッフとの連携(2022/07)
「オンライン診療」とは遠隔医療のうち、医師-患者間において、情報通信機器を通して「リアルタイム」に行う医療行為であるが、2022年2月の診療報酬改定では、コロナ禍の特別措置ではなく、オンライン初診として初診料が認められた。
オンラインリハビリテーション医療(以下オンラインリハ)(telerehabilitation)について、海外では10年以上の蓄積がある。摂食嚥下リハビリテーション医療(摂食嚥下リハ)では、アドヒアランスについて 対面と差はないとの報告(Acta Otorhinolaryngol Ital. 2018;38:79-85.)があるが、摂食嚥下訓練効果については、エビデンスが十分でない。
摂食嚥下のオンラインリハにおいては、在宅での摂食環境や食事の様子について家人・訪問スタッフとのリアルタイムの視覚共有ができ、医療機関受診の対面診療では得られない貴重な情報収集や問題点の指摘が可能となる。
厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」では、医師-患者間のオンライン診療において、円滑なコミュニケーションを支援する者として「オンライン診療支援者(訪問スタッフなど)」が定義されている。この訪問スタッフのサポートが、摂食嚥下障害の在宅医療の細やかな病診連携・オンラインリハの質向上に貢献している。
一方で、摂食嚥下ケア(食のケア)における「訪問スタッフ側の」オンラインリハへのニーズも把握する必要があり、訪問スタッフ(医療職)68名にWEBアンケートに無記名での回答を依頼した。
訪問時の食のケア7項目において「困ったことの有無」の回答と具体的な内容についてコメントを求めたところ
①姿勢や食具(摂食方法・介助内容の情報共有や食具の判断・コストなど)と②食事の内容(介護力・コスト、患者側の受容不足、独居者への対応など)では80%以上、③水分の摂取方法(トロミ不適合・不統一、適正な水分量の判断など)と④口腔ケア(開口困難、患者側ケアの継続困難、口腔ケア時間の不足など)では 70%以上が困っていると回答。⑤服薬(大きな錠剤・多剤・漢方薬への対応、粉砕・簡易懸濁の判断など)、⑥義歯(歯科医との連携など)⑦口腔乾燥(ケア継続困難・理解不足、人工唾液・保湿剤の適否など)でも、50-70%が難渋していた。また、約80%の訪問スタッフが、食のケアについてオンライン診療で相談したいと回答した。
オンラインリハビリテーション医療は、食のケアにおいて、患者側のみならず訪問スタッフ側のニーズも高く、オンライン診療体制の整備がさらに求められる。
(本文の一部は第28回日本摂食嚥下リハビリテーション学会2022にて発表予定)
社会医療法人若弘会 わかくさ竜間リハビリテーション病院 野﨑園子