日本神経筋疾患摂食・嚥下・栄養研究会

「とろみ」について(2015/05)

昨年8月のコラムで,清水充子先生より「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013」のご紹介がありました.それに合わせて知っておいていただきたいのが,同じく設定された飲み物についての指標「学会分類2013(とろみ)早見表」です.
 嚥下障害者のためのとろみ付き液体を,「段階1:薄いとろみ」,「段階2:中間のとろみ」,「段階3:濃いとろみ」の3 段階に分けて表示しています.
 水分のとろみを統一した基準で管理することを目的としており,病院・施設間を移動する際にも,同じ指標でとろみの程度を管理できるようにと作られたものです.どのような環境,条件で,どのように摂取していたかという情報とともに利用されることで,効果的に使用できると思います.
「薄いとろみ」;コップを傾けると落ちるのが少し遅いと感じるが,コップからの移し替えは容易であり,細いストローでも十分に吸える程度のとろみ
       ※ゼリー飲料全般については,おおむね薄いとろみに近いものとして扱うこととされています.
「中間のとろみ」;スプーンで混ぜると少し表面に混ぜ跡が残る程度で,コップからも飲むことができるが,ストローで飲むには太いものが必要な程度のとろみ
        ※学会分類2013(食事)の「0t:たんぱく質含有量の少ないとろみ水(ゼリー除く)」として摂取できます.
         まず最初に試されるとろみの程度です.
「濃いとろみ」;スプーンで「食べる」という表現が適切で,ストローの使用は適していない,コップを傾けてもすぐに縁までは落ちてこない程度のとろみ
       ※重度の嚥下障害症例を対象としており,中間のとろみで誤嚥リスクがある症例でも安全に飲める可能性があります.
とろみ調整食品の種類によっては,付着性などが増強しかえって嚥下しにくくなることがあるので,粘度のみを評価するのではなく試飲して確認します.
この範囲に該当しない,薄すぎるとろみや,濃すぎるとろみは推奨できないとされています.とろみは濃いほど良いといったイメージを持っている方も多いようですが,基準を超えない範囲での調整を心がける必要があります.
 早見表では,性状を日本語で表現し,測定機器をもたない方のために市販のとろみ調整食品の説明書と比較して市販品を利用できるように粘度を明示し,粘度測定装置がなくても可能な簡便な試験方法としてラインスプレッドテスト(Line Spread Test;LST)の値を示しています.LSTとは,円形に目盛のついたシートを用い,直径30mmのリングに20 ml の測定したい溶液を入れ30 秒間安定させた後,リングを持ち上げ30 秒後に溶液の広がりを計測するものです.
 
詳細については,日本摂食嚥下リハビリテーション学会のホームページでご確認ください.
http://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/classification2013-manual.pdf
早見表を使用するときは,必ず嚥下調整食学会分類2013の本文を参照してください.

 

国立病院機構高松医療センター 栄養管理室長 鎌田裕子