日本神経筋疾患摂食・嚥下・栄養研究会

コネクトーム・プロジェクト(2012/10)

 2012年の10月13日~16日に開催された米国神経科学会(SFN2012)で表題の特別シンポジウムに参加してきました。コネクトームとは生物の神経系内の各要素(ニューロン、ニューロン群、領野など)の間の詳細な接続状態を表した神経回路の地図のことです。

 脳地図としてはコルビニアン・ブロードマンの脳地図が有名ですが、現在では脳機能マッピングに非侵襲的に詳細な地図が描けるようになってきました。これは、脳内の各部の生理学的な活性(機能)をMRI, MEGなどにより画像化(マッピング)することで、脳で行われる様々な活動において、脳内の各部位がどのような機能を担っているのかを分析する手法です。さらに、正常の状態と比べることで、脳の病気の診断にも用いることができます。

 コネクトーム・プロジェクトは上記の脳地図をより詳細に検討するだけでなく、脳の領域でどの部位とどの部位とが機能的に連絡しているかを地図として描こうというものです。ハーバード大学グループ、ワシントン大学グループが、NIHからのグラントで今後5年間で8千万ドルのプロジェクトとして計画されています。7T(テスラ)のMRI(通常のMRIは1.5~3T)を用いて、様々なタスク(視覚、手の動き、発語、記憶実験、心理負荷実験、など)を施行し、fMRIで種々の活動に関連した脳機能マッピングを行い、その連絡地図(コネクトーム)を分析・解明するものです。

 口腔運動についても本プロジェクトのターゲットとなっており、発声、発話、顔面運動、舌運動等のタスクプロトコールが組まれています。口腔運動は嚥下運動と重複する動作であり、口腔運動のコネクトームが明らかになることにより、嚥下運動の神経メカニズムの理解が進むと思われます。

 我々の研究室からは今回のSFN2012に、fNIRS(光トポグラフィ)による口腔運動並びに嚥下運動時の脳機能マッピングに関する演題を発表しました。今後、我々が得た結果とコネクトーム・プロジェクトによるデータとを比較検討してゆきたいと考えています。

 

参考資料

1)NIH Blueprint for Neuroscience Research, Human Connectome Project.
http://www.neuroscienceblueprint.nih.gov/connectome/

2)Olaf Sporns. Discovering the Human Connectome. MIT Press. 2012.

 

京都府立医科大学大学院 医学研究科

山脇正永