日本神経筋疾患摂食・嚥下・栄養研究会

個人対応嚥下調整食、トロミ調整食品について(2016/12)

現在、「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013」・「学会分類2013(とろみ)早見表」・「嚥下食ピラミッド」・「えん下困難者用食品許可基準」・「UDF区分」・「スマイルケア食」など様々な基準が存在しています。
そして、トロミ調整食品も各メーカーより様々な(べたつきのない・ダマになりにくい・透明感がある・少量でしっかりとろみがつく・たんぱく質の多い牛乳にも使える・酸性食品なども使用可能など)特性を持ったものなど次々出されています。当院もソフト食など形態調整食を提供し、患者個々に合わせて食事以外の水分にもトロミ調整食品を病棟に渡し調整し提供しています。トロミ調整食品使用者は重症心身障害の患者など長期入院の方も多数おられます。
トロミ調整食品の見直しを行った患者の一例を紹介します。生後入院され、45歳男性、二年前(2014.9.18)まで形態調整食を経口摂取していたが、嘔気、嘔吐により中止、濃厚流動のトロミ付き経口摂取に変更となる。体重増加があった為(2015.6.18)より濃厚流動量と牛乳を減らした。しかし体重変化あまりなし、(2016.2.11)から濃厚流動量を-150kcalとした。担当看護師よりトロミ調整食品の使用量が多いのでは?と担当医師に相談があり、担当医師より摂食嚥下チームとNST介入となりました。水分摂取など調べていくと、トロミ剤をそれぞれに多く使用している事がわかりました。看護スタッフは攪拌後とろみがつく前に経口摂取していることなどわかりました。現在使用しているトロミ調整食品は濃厚流動250mlに2%標準7g使用ですが1.5倍の10gを使用していました。お茶・水にも同様に1.5倍強のトロミ調整食品を使用していました。一日の使用量を合計すると100g以上になりました。使用していたトロミ調整食品は100g当たりエネルギー259kcal・たんぱく質1.0gです。トロミ調整食品で毎日約300kcal摂取したことになります。NST・摂食嚥下チームの介入により濃厚流動には半固形化補助食品を使用し、お茶・水には標準2%のトロミ調整食品を使用し攪拌30分以上置いて、提供するように統一化出来ました。
とろみをつけ安全に水分など摂るのは必要です。少量の使用はあまり問題ないと思うのですが、使用量が多く長期になると使用しているトロミ調整食品によってはエネルギー(糖質)のみ摂取することとなり、栄養バランスが崩れたり、Alb値の低下・サルコペニアにつながったりも考えられます。トロミ調整食品によって成分など異なります。また疾患により他の成分にも注意が必要です。当院も約束食事箋に成分表を載せていますが、今回の事例で商品の成分・特性(トロミ調整食品はある程度とろみが安定するまで攪拌しないといけない)などをスタッフに説明し適正な使用を伝える重要性を感じました。一般病床の入院患者様は適時、VF検査など行い、適切な形態などを把握していますが、長期入院患者様は変化に気づきにくく、見逃しがちになってしまいます。食事は生きてゆくためにも必要で、楽しみでもあります。安全でQOLを保つためにも個々の嚥下機能に合わせた食事・栄養を多職種と協力しその方の現在ベストが提供出来る様見直したいと思います。

国立病院機構 鳥取医療センター 栄養管理室 香田 早苗

学会分類2013と他分類の対応