日本神経筋疾患摂食・嚥下・栄養研究会

嚥下調整食の工夫(2012/02)

 咀嚼・嚥下障害をきたした場合、ゼリー食,ミキサー食など嚥下調整食で食品調整を行うことがあります.毎日,嚥下調整食を食べていると,だんだん食欲が低下し,嚥下障害の治療としての食品調整を持続できないことはしばしば経験します.

 

 そこで,嚥下調整食への様々な取り組みが始まっています.

 

 数年前から、医師などが有名ホテルと提携してレストランで嚥下食の洋食コースを食べる企画があり,嚥下障害の患者さんたちが毎年,楽しみにしています.また,結婚式の食事に嚥下調整食を取り入れているレストランもあります.常食が食べられないという理由で冠婚葬祭に出席できなかった方々に好評です.

 

 このような取り組みは食事の楽しみとともに外食の機会を得ることができて,嚥下障害の治療を持続することが可能となる方法であり,今後も徐々に広がることでしょう.

 

 遠方までおいしい嚥下調整食を宅配する業者もあります.また,最近では酵素を用いて食材本来の形・色・味を保つ酵素均浸法や凍結含浸法により通常の食事と見た目が変わらない食事の開発も進んでいます. 硬さの調整や素材本来の栄養成分の減少を抑え必要な栄養素を添加することも可能です.現時点では価格は割高ですが,手軽に嚥下調整食をおいしく食べられる点は利点です.

 

 食品調整を余儀なくされている患者さんたちに食の楽しみを味わって頂けるよう,さらなる工夫がされること,また,今後の課題としてコストダウンできることが望まれます.

 

京都第一赤十字病院 神経内科

巨島文子