日本神経筋疾患摂食・嚥下・栄養研究会

在宅嚥下医療における遠隔医療・オンライン診療(2019/02)

在宅医療において、文書指示ではリハビリテーションのプランが十分共有できて
いないことを経験する。在宅療養の摂食嚥下障害患者のケアは、在宅における食事場面を医療機関スタッフと在宅スタッフが視覚的に共有することにより、有用なプランの構築につながる。
Information Communication and Technology(ICT)による遠隔診療
「情報通信機器を用いた診療(いわゆる「遠隔診療」)は、難病患者に対して直接の対面診療と適切に組み合わせて行われるときは、おこなっても差し支えないこととされている(平成9年12月24日 健政発第1075号厚生省健康政策局長通知)。
当院では地域の在宅スタッフを仲介者として、在宅療養患者にICTによる遠隔診療を試みており、患者側の安心感とリハビリ意欲の維持につながっている。また、医療者側としても在宅患者の様子を視覚情報としてリアルタイムに共有できる。たとえば、自宅での嚥下調整食の内容、食具の使い方(摂食動作)、食事介助の様子、テーブルや椅子の高さや姿勢調整などの情報である。これらにより情報交換が密になり、外来受診時に具体的な指導をおこなうことができるようになった。一方で、在宅のネット環境によっては通信が安定しない、訪問日時の急な変更への対応困難などの課題もある。
平成30年度の診療報酬改定では、対面診療と組み合わせた「オンライン診療」の診療報酬が認められ、また、同年の介護保険報酬改定では、デイケアのリハビリ会議にテレビ電話での参加が認められた。
オンライン診療の診療報酬が認められるためには、一定の条件を満たす必要がある(オンライン診療の適切な実施に関する指針 平成30年3月)。厚生労働省は、今後のオンライン診療の普及、技術革新等の状況を踏まえ、定期的に内容を見直すことを予定としている。
オンライン診療は今後の在宅医療のありかたの一つであり、摂食嚥下医療を担うわれわれは、この指針の動向を注視しながら、ICT環境の整備などの備えをしていく必要がある。
用語の定義(厚生労働省)
遠隔医療
情報通信機器を活用した健康増進、医療に関する行為
オンライン診療
遠隔医療のうち、医師-患者間において、情報通信機器を通して、患者の診察及び診断を行い診断結果を伝達する等の診療行為を、リアルタイムで行う行為。
関西労災病院 神経内科・リハビリテーション科 野﨑園子