日本神経筋疾患摂食・嚥下・栄養研究会

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の嚥下障害について(2014/04)

最近、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を原疾患に持つ嚥下障害患者に遭遇する。

COPDは、一般的に、気道がび漫性に狭窄ないし閉塞した状態にある慢性の肺胞気道系疾患を総称している。ただし、限局性肺疾患や心疾患によるものは含まれない。摂食・嚥下と呼吸は密接に関係していて、呼吸不全の状態は嚥下時の呼吸停止に乱れを生じ、気道閉塞不全やそのための誤嚥をきたす可能性が考えられる。また、咳による排痰機能も弱くなる。

COPDは、高齢者に比較的多く、他に嚥下障害をきたす合併疾患がみられることがある。そうするとCOPDによる呼吸障害が呼吸のコントロールを困難することにより誤嚥をきたしていることと,嚥下障害があって呼吸障害をきたしていることの鑑別は難しく、相互の関係があるからだと推察される。

当院の嚥下NSTチームへの依頼は、約30%近くが原疾患に呼吸器系疾患を合併していることが多く、なかでも嚥下障害の症状のあるCOPDの患者は多いほうである。半数以上の患者は、安定した姿勢をとらせ(SPO2監視下)、食形態は刻み食からソフト食に変更し、食べるスピートや一口量などを調節する。水分はトロミを加える。その他に、言語聴覚士によるアイスマッサージ法やブローイング訓練とPTによる体位ドレナージ法など種々の代償手段を用いている。

これらによって、少しずつ経口摂取が可能となって行くが、特にるいそうのCOPDでは、サルコペニアの嚥下障害をきたしている可能性があるためか注意しながらの対応をしている。しかし、介入しても病状が悪化し、嚥下機能の回復ができないままに至ることを経験する。このように呼吸障害で嚥下障害も合併した場合へのアプローチの難しさを痛感している。 平成26年3月28日

独立行政法人国立病院機構千葉東病院 歯科医長
大塚 義顕