日本神経筋疾患摂食・嚥下・栄養研究会

摂食姿勢の工夫 ~パーキンソン病およびパーキンソン症候群~(2020/06)

パーキンソン病およびパーキンソン症候群の患者さんによくみられる前傾、前屈姿勢はどのようにして起こっているのでしょうか?前傾・前屈姿勢は、図1a)のように、膝・股関節が屈曲し骨盤が後傾し腰椎の生理的前弯の減少から胸・腰椎が後弯(体幹が前屈)、頸椎が前弯(過伸展)して、顎が前方にやや突き出した姿勢です。
この姿勢で座位をとると、図1b)のようにオトガイー胸骨柄間距離が延び、前頸部の効率的な筋収縮が阻害され、喉頭(舌骨)挙上が困難となり、誤嚥に至る危険性が高まります。

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この状態を背もたれのない座位でみると、図2a)のように、202006zu3
頸、背、腰部の筋が姿勢を崩さないように「頑張っている」ため、骨盤が後傾し、下部体幹が後方へずれ円背となって頭部が胸郭から前方へ出るため顎が前方へ突き出した姿勢になります。
対応として、図2b)のように椅子や車いすの座面にクッションを入れ、骨盤の後傾を修正し、骨盤の上に胸郭、頭部が乗るように整え頸部前屈位を引き出すと、オトガイー胸骨柄間距離が短縮され、各嚥下機能を働きやすくすることができます。この時のクッションの入れ方は図3のとおりです。骨盤周囲筋の固縮や股関節の拘縮などにより座位が取りにくい場合は、ティルト型車椅子やベッド上リクライニングで背もたれにもたれた後傾位にし、頭部の安定を枕やクッションで調整します。頭、胸郭、骨盤、下肢の位置関係を整えると、嚥下をスムースにできる場合もあります。

また、咀嚼や口腔内の移送がしにくいといった口腔期の問題への対応としても、機能に合わせた食物形態の工夫とともに姿勢調整も役立ちます。摂食に時間がかかるために疲労し摂取量が減る、誤嚥や窒息を引き起こすというトラブルを防ぐためにも有効な工夫です。

以上のような視点で、状況に合わせた対応が功を奏することがありますが、摂食は、常に身体を動かす活動です。どこかを動かすことで姿勢にも変化が現れます。その変化を見逃さず動きにあわせて、動きを阻害することなく安定できる姿勢をみつけながら進めることが肝要です。また、ここでは姿勢の取り方を解説しましたが、咽頭残留を引き起こさないように、各種嚥下法2)を活用することも有効です(図4参照)。

四肢・体幹の筋緊張の評価や工夫、姿勢の取り方については、理学療法士、作業療法士の方々が専門性を発揮されます。個別性も高いことですので、状況に応じて相談されることをお勧めします。

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参考文献

1) 石本 寧:言語聴覚士のためのパーキンソン病のリハビリテーションガイド(杉下周平他編).東京.協同医書;82-5、2019

2)日本摂食嚥下リハビリテーション学会医療検討委員会:訓練法のまとめ(2014版).日摂食嚥下リハ会誌18:55-89、2014

 

 

埼玉県総合リハビリテーションセンター

言語聴覚科 清水充子