日本神経筋疾患摂食・嚥下・栄養研究会

服薬困難(2013/10)

内服薬は口から確実に胃に送られて初めて薬効を判定でき、その効果を期待することができる。要介護高齢者の多くは数種類の薬を処方されている。一方、要介護高齢者では嚥下障害を高率に合併しており、薬の服用困難を感じている。しかし、内服薬の剤形や服薬方法は、患者の嚥下能力との適合性を客観的に検討されていないことも多い。例えば、水分誤嚥のある患者へのさまざまな剤形調整は、ゼリー状が適しているにもかかわらず、現場での介護者の判断で粉砕されて、さらに嚥下しにくい剤形になっていることもある。また、粉砕薬を“粥”に混ぜて服薬させていることもある。内服薬は患者の嚥下能力にあった剤形と服薬方法が処方されるべきであるが、内服について何らかの不安を抱えている患者の服薬環境の実態とその対策について、十分な検討はなされていない。現場での経験的判断に基づく服薬方法が取り入れられており、医師の処方は嚥下能力を考慮した剤形や内服方法まで指示されているとは限らない。

 

私たちは平成25年度の科研費のサポートを受けて、多くの施設のご協力のもとに、服薬困難の患者さんの実態調査をおこなっている。まだ、データ集積中であるが、服用しにくい剤形としては、散薬・OD錠・カプセルなど様々なものがあり、また、服用方法にも課題がありそうである。

 

先日参加したEuropean Society of Swallowing Disorders(ESSD)のフロアで、認可を受けて、錠剤を水薬に変更することを専門にする、企業の展示があった。そこで英国の服薬のガイドラインを見る機会があった(Guideline on the medication management of adultswith swallowing difficulties)。

 

この分野はこれからもっと議論すべきではないかと思われる。

 

兵庫医療大学 野﨑園子