日本神経筋疾患摂食・嚥下・栄養研究会

標準体重とBMI(2017/08)

従前から行ってきたPET(陽電子放射断層撮影)の結果説明に加えて、昨年12月から健診部での簡単な内科的診察と結果の説明を担当している。予防医学の重要性については今さら言うまでもないことだが、早期がんの発見や生活習慣病の入り口でギアチェンジがなされて健康を回復した人も多いのではないだろうか。
当院の健診用の用紙は数枚束ねられており、冒頭に身長と体重が書き込まれている。私はまずその値を見て、身長(cm)から100を引いて0.9を掛ける日本式の簡易な標準体重の算出方法を試みて、健診者が丸椅子に座られるのを待つ。ところがこの方法を適用すると、50歳以上の成人では多くの人が体重オーバーになってしまう。ある50代の男性、みるからに小太りで、いわゆる標準体重を数キロオーバーしている。それを指摘すると「私はこの体重がベストなんです。若い時からほとんど変わりません。昔、かかりつけ医の指導で数キロ体重を落とした時には、どうも体調がよくありませんでした」と言われる。逆に、30代後半の男性、背が高くやせ形で、標準体重より少し軽い体型である。聴診するために上着をあげてもらうと、肋骨が浮き出てどこか貧相な感じさえ受けてしまう。
人間には文字通り骨が太くて骨格ががっしりしている「骨太」体型の人もいれば、骨が細くきゃしゃな「骨細」体型の人もいるものである。その人なりの、理想的な体型と体重というものがありそうで、体重だけで判断できるほど単純なものではないのかも知れない。
ただ体重過多の人は脂肪肝で軽い肝機能障害がみられ、尿酸値や中性脂肪、悪玉コレステロールの高値の人が多いのは事実である。
ところで標準体重は健康指数を示す数値であるが、体内に含まれる脂肪の割合を判定しているわけではない。標準体重でも脂肪の割合の高い”かくれ肥満”の恐れもあるし、逆に体重は多くても筋肉量の多い過体重の人もいる。肥満度の指標として国際的にはBMIというものが使われる。体格を相対評価したもので、体重(Kg)÷(身長m×身長m)で求められる。基準値は男性が22.0、女性が21.0で、統計的にみて最も病気にかかりにくい健康的な数値とされ、この数値から離れるほど有病率が高くなる傾向にある。

公益社団法人鹿児島共済会南風病院院長 福永秀敏