日本神経筋疾患摂食・嚥下・栄養研究会

気管切開後の合併症(2010/12)

気管切開後の重篤な合併症として気管腕頭動脈瘻があり、0.4~0.7%の方に発生します。第4気管輪より低い位置で気切を行った場合に解剖学的位置からおこりやすいとされており、カニューレ先端の気管壁への接触やカフによる圧迫壊死により生じることが殆どです。一旦発症すると大量出血をきたし非常に致命率が高いため、発症の予防に努めることが重要です。
予防としては第2-3気管輪で気切すること、気切後レントゲンや内視鏡検査で定期的にカニューレの位置を確認すること、カフ圧モニターを行い過剰なカフによる気管壁の壊死を防止することなどがあげられます。前兆として28-50%の症例で大出血の数時間から数日前に少量の先行出血がみられるため、気管前壁の異常拍動が観察されたり先行出血がみられた場合には、造影CTや血管造影検査を施行し、予防的手術も考慮する必要があります。万一出血した場合には、一時的な救急止血法としてカフ付き気管カニューレ(挿管チューブに入れ替えることも有効)のカフを過膨張させて、カフ位置を上下に微調節することで止血が可能なこともあり、試みられるべき方法です。一時止血後は早急に外科的な処置(腕頭動脈結紮離断術など)にゆだねることになります。
カフの有無にかかわらず、気管カニューレを挿入されている方で体動や緊張の激しい方、側彎などによる頸部や体幹変形のある方(腕頭動脈の位置異常をきたしていることもあるため)では、特に気管腕頭動脈瘻への注意が必要です。
 

<CT 矢状断>

脳性麻痺症例

気管腕頭動脈瘻発症直前

矢印:変位した腕頭動脈