日本神経筋疾患摂食・嚥下・栄養研究会

神経筋疾患患者の歯ぎしり治療のための口腔内装置(2010/01)

 神経筋疾患患者の嚥下障害の原因には、機能的と器質的と心因的の3つが考えられます。 特に器質的原因の中で口腔内状態の悪化は、嚥下の口腔期以降に大きな影響を及ぼすものと 考えられます。マウスガードは、口腔内状態の悪化を予防する1つの手段であることを皆さまにご紹介します。
 神経筋疾患患者では、緊張性咬反射による“食いしばり”や“歯ぎしり”などがよくみられます。これによって、歯牙の破折や軟組織の損傷を生じることがあります。歯科では、この様な“食いしばり”や“歯ぎしり”による歯牙の破折や軟組織の損傷に対しては、しばしば口腔内装置(以下マウスガード)治療を行うことがあります。マウスガードは、口の中の保護装置で、マウスピースとも呼ばれています。スポーツ用品店などで販売している簡易型のものもありますが、不安定で、咬み合わせが不良のため顎関節を痛めることがあります。歯科医が型をとって精密に作成することが安全です。一般的に現物の保険点数は、1,500点です。特殊な装置なので、歯科医院によっては、15,000円から20,000円程度の自費請求をされる場合があります。出来上がりまでは、事前の診査や印象(歯型とり)などの過程を経て、3~4回の来院で出来上がります。装置の材質は、スポーツ選手の歯を守るためのマウスガードと同様のシリコン製のものが多く用いられています。当院では、“食いしばり”や“歯ぎしり”のある患者様には保険内で提供しています。患者様からは、装着感がよくとても評判です。本人でも介護の方でも容易に着脱できるのが特徴です。アフターケアは、未装着時にコップなどの容器に水道水を張り、水中で保管します。毎日水は交換します。基本的に毎日、流水下でぬめりや汚れを落とすようにします。このように口腔内に装着するものであるため、不潔になりやすく、衛生管理を徹底することが大切です。万が一、破れたり、壊れたりしても歯型を採取して保管してあれば、再作成は容易にできます。貴施設でもマウスガードを装着して、歯や粘膜を守るケアを検討してみてはいかがでしょうか。最近は、ALS患者に対して、マウスガードに吸引ホースを埋め込んだ持続吸引装置を作成して使用した報告もあります。

 

国立病院機構千葉東病院 歯科

大塚 義顕

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