日本神経筋疾患摂食・嚥下・栄養研究会

重症筋無力症の嚥下障害(2010/11)

 球症状のある重症筋無力症(MG)において、摂食・嚥下障害は高頻度に見られる症状である。MGでは胸腺摘出術後の経過、全身病状の寛解・増悪期、クリーゼ治療におけるステロイド減量期などには、摂食・嚥下障害の程度も変動する。摂食・嚥下障害が悪化して誤嚥を起こすと、MGの病状自体が悪化したり、術後の回復が遅れたりすることは、日常臨床で経験することである。MGの摂食・嚥下障害に対して適切に対処するためには、早期発見による対策が必要である。
 これまで、嚥下障害を主訴とする救急患者の2%はMGである(ActaOtorhinolaryngol Ital. 2007;27:281-285.)、晩発性のMGの初発症状は球麻痺や非眼球症状が多い(Rev Neurol. 2006;162:990-996)、原因不明の嚥下障害の診断として、テンシロンテストが有効との報告は散見される。
 しかし、MGの臨床経過の中で、摂食・嚥下障害の増悪を早期に感知する因子については、筆者の検索した限りでは、QMG score(うち特にbulber subset)はVF上の誤嚥と関連があるという20名の報告のみである(Muscle Nerve. 2004 ;29:256-260)。不顕性誤嚥も少なくないという。MGの胸腺摘出の術後経過における誤嚥のリスク管理などでは、神経内科はICU、外科などとの連携も必要である。簡便で検者間の評価の差が少なく、かつ感度の高い、ベッドサイドの臨床指標を検討していく必要がある。これは在宅療養におけるMG患者の摂食・嚥下障害の早期発見にも必要なものであると考える。

 

兵庫医療大学 リハビリテーション学部 野﨑園子