日本神経筋疾患摂食・嚥下・栄養研究会

第一回学術集会 長崎大会

期 日: 2005年8月20日(土)
会 場: 公立学校共済長崎宿泊所  ホテルセントヒル長崎
〒850-0052 長崎市筑後町4-10
TEL 095-822-2251
会 長: 独立行政法人国立病院機構南九州病院 福永秀敏
1:00~1:15 会員総会
1:15~1:20 開会の辞
福永秀敏 国立病院機構南九州病院
1:20~2:20 座長 福永秀敏 国立病院機構南九州病院
特別講演
摂食・嚥下障害の診断評価と対処法~神経筋疾患を中心として~
向井美恵 昭和大学歯学部教授
セクション1 座長 市原典子 国立病院機構高松東病院
2:30~2:38演題抄録を見る 神経疾患病棟における摂食・嚥下障害対策(3年間の推移)
野崎園子 国立病院機構徳島病院
2:38~2:46演題抄録を見る 親訓練プログラムを参考にした行動療法の効果~食後に食器を落とす児に対する関わりについて~
大川原佳代 国立病院機構南九州病院
2:46~2:54演題抄録を見る 栄養介入により嚥下障害が改善したパーキンソン病(PD)
山岡朗子 国立病院機構東名古屋病院
2:54~3:02演題抄録を見る 摂食・嚥下・栄養サポート外来
杉下周平 国立病院機構徳島病院
3:02~3:10演題抄録を見る チームで取り組む嚥下訓練~クリティカルパスを使用して~
安田めぐみ 国立病院機構南九州病院
セクション2 座長 箕田修治 国立病院機構熊本再春荘病院
3:10~3:18演題抄録を見る 筋萎縮性側索硬化症(ALS)の嚥下障害に対する独自の食事基準を施行して
~問題点と今後の展望~

鎌田裕子 国立病院機構高松東病院
3:18~3:26演題抄録を見る 筋萎縮性側索硬化症の嚥下障害に対する口腔期訓練の効果
市原典子 国立病院機構高松東病院
3:26~3:34演題抄録を見る ALSにおける胃瘻造設時の呼吸機能について
寄本恵輔 国立精神神経センター国府台病院
3:34~3:42演題抄録を見る 呼吸器導入が先行したALS患者における胃瘻造設の時期について
黒田昌寿 国立精神神経センター国府台病院
3:42~3:50演題抄録を見る 喉頭気管分離術を施行した神経筋難病患者における栄養摂取状況および栄養状態の変化
内野克尚 国立病院機構熊本再春荘病院
セクション3 座長 金藤大三 国立病院機構西鳥取病院
3:50~3:58演題抄録を見る 咀嚼訓練による嚥下機能の変化について
後藤あかね 国立病院機構鳥取医療センター
3:58~4:06演題抄録を見る 重症筋無力症患者における嚥下造影検査によるテンシロンテストの効果判定
田中 尚 国立病院機構刀根山病院
4:06~4:14演題抄録を見る 後天的障害児への経口摂食を通してQOL向上を考える
柏尾寿美代 国立病院機構南九州病院
4:14~4:22演題抄録を見る 筋強直性ジストロフィー患者の固形物嚥下後の液体嚥下の検討
山本敏之 国立精神・神経センター武蔵病院
4:22~4:30演題抄録を見る 嚥下障害と嚥下訓練に対する意識調査
内海みき子 国立病院機構長崎神経医療センター

神経疾患病棟における摂食・嚥下障害対策(3年間の推移)

国立病院機構徳島病院臨床研究部・神経内科
野崎園子
国立精神・神経センター国府台病院神経内科
*湯浅龍彦、政策医療神経総合湯浅班

神経疾患病棟における摂食・嚥下障害対策(3年間の推移)
政策医療神経総合湯浅班37施設における摂食・嚥下障害対策の実態調査を行ない3年前の調査結果と比較した。VF実施は21→26施設と増加、血管造影剤使用は13施設であった。直接訓練、間接訓練、誤嚥防止術は23→25施設、17→21施設、7→9施設と増加していた。嚥下困難食は30→19施設へ減少、14施設で食物窒息の経験があった。
ALSへの摂食・嚥下障害対策では、診断・告知後の早期開始が10→15施設、補助栄養としての経管栄養使用は27→34施設であった。PEG造設基準では%FVC<50%が6→11施設、経口摂取困難出現後が20→15施設であり、合併症の発症20%以上は4→0施設と減少した。
 神経疾患の摂食・嚥下障害対策はこの3年間に少しずつ普及してきたと思われる。一方で、患者の食物窒息の実態も明らかになり、院内全体の啓蒙や患者・家族の早期教育の必要性が示された。

親訓練プログラムを参考にした行動療法の効果
~食後に食器を落とす児に対する関わりについて~

独立行政法人国立病院機構 南九州病院
大川原佳代
独立行政法人国立病院機構 南九州病院
大迫洋子 福迫成子 山下紀子 長井典子 田中テルミ 中村千鶴 佐藤亜紀子

【はじめに】家庭の事情で乳児期より親の愛情を直接受けることが出来なかった学童児が朝食後だけに食器を落とす行動に着目し、寂しさや周囲の人にかまってほしいことを表現しているのではないかと考えた。そこで肥前方式の「親訓練プログラム」を参考に、看護師が統一した行動療法を実施することで児の行動に良い結果が得られた。
【方法】1.専用の記録用紙で朝食時の環境と児の行動の観察 2.児の朝食時の環境調整 3.「親訓練プログラム」を参考にした行動療法の展開(スタッフ間の統一)4.記録による行動療法の評価
【まとめ】1.スタッフが統一した関わりを持つことで食器を手渡す行動が多くなった。2.肥前式「親訓練プログラム」を実践したことで人に興味を示し甘えるしぐさが多くなった。3.遠城寺式発達評価では基本的生活習慣と言語理解の領域に発達が見られた。以上のことから肥前式「親訓練プログラム」を参考にした行動療法は本児にとって有効であった。

栄養介入により嚥下障害が改善したパーキンソン病(PD)

国立病院機構 東名古屋病院
山岡朗子
国立病院機構 東名古屋病院
饗場郁子、齋藤由扶子、伊藤信二、後藤敦子、横川ゆき、見城昌邦、藤田麻子、松岡幸彦

【目的】パーキンソン病(PD)患者では嚥下障害の進行とともに経口摂取量が減り、また薬の内服も不十分となる。このため栄養状態が悪化しADLが低下、廃用症候群をきたし、さらに嚥下障害が悪化するという悪循環が生じる。
今回は栄養介入により全身状態、及び嚥下障害が改善した症例を経験したので報告する。
【経過】65歳時発症のPD患者女性Yahr 4。67歳時より嚥下障害出現、経口摂取量低下し、経腸成分栄養剤を経口摂取していた。68歳時、嚥下性肺炎から心不全となり一時的に人工呼吸器も要したが、離脱後、中心静脈栄養から胃瘻造設、経管栄養導入した。その後嚥下障害も改善し、2ヶ月後には経口摂取再開。胃瘻も抜去した。
【考察および結論】嚥下障害のために栄養状態が不良となっているPD患者に対しては、一時的に経口摂取を中止し中心静脈栄養や経管栄養で十分な栄養を与えることにより、ADLや嚥下障害を含めた全身状態の改善が図れる可能性が示唆された。

摂食・嚥下・栄養サポート外来

国立病院機構 徳島病院
杉下 周平
①国立病院機構 徳島病院  ②岡山大学歯学部付属病院特殊歯科総合治療部
①野崎 園子 ①山川 まりこ ①藤原 育代 ①馬渕 勝 ②石田 瞭

われわれは摂食・嚥下障害や栄養障害について在宅療養支援をおこなう目的で、平成17年4月より摂食・嚥下・栄養サポート外来を開設した。
対象:摂食・嚥下・栄養障害を有する患者。疾患内訳:筋ジストロフィー(DMD10人、CMD1人)、脳性麻痺6人、神経難病1人、その他2人(延べ46人;平成17年7月21日現在)診療は医師、歯科医師(岡山大学より月1回応援診療)、言語聴覚士、保育士、栄養士、理学療法士などでチームとして診察にあたる。完全予約制とし、初診患者、他院より紹介患者については、予め病状の概要について情報を得て担当者に連絡する。以下、各職種の役割について紹介する。
医師・歯科医師:診察の上必要な介入についてのプランを作成する。また、栄養評価の栄養評価のための血液検査と合併症評価のための胸部CTなどの指示をおこなう。言語聴覚士、保育士:嚥下訓練とあわせて、在宅での食事を持参させ、観察をおこない摂食指導をおこなう。栄養士:在宅での食事記録に基づき、栄養摂取量について指導するとともに、嚥下困難食の調理法について指導と確認をおこなう。理学療法士:摂食姿勢は嚥下状態を大きく左右するので、車いすやシーティングシステムの調整をおこなう。当院では摂食・嚥下障害のある患者の初回指導は入院を原則としている。これは、外来では平素の摂食状態が把握できないこと、嚥下困難食は実際に食して体験し、調理法を実習しなければ理解を得にくい面があるとの経験に基づいている。入院時におこなった訓練や食事の指導が、在宅においても継続されることが、摂食・嚥下・栄養障害患者の最も重要なポイントである。受診毎に各職種が関わり、指導内容が実践しているかを確認することにより、問題点を早めに抽出することができ、再指導に生かすことが可能となった。

チームで取り組む嚥下訓練
~クリティカルパスを使用して~

独立行政法人国立病院機構南九州病院
安田めぐみ
独立行政法人国立病院機構南九州病院
田上さとみ(看)、山本泉美(看)、吉原由美(看)、佐藤千紗(OT)、吉崎佳奈(OT)、秋竹伸春(OT)鶴利恵(栄)、園田至人(医)

【研究目的】パーキンソン病は、進行と共に嚥下障害を来しやすい。治療ガイドラインでは、E BMの観点からパーキンソン病の嚥下訓練の有効性は不十分とあるが、一時的な嚥下障害の回 復により、摂食が高まり全身の栄養状態の改善が得られると述べられている。今回、パーキン ソン病でJCS3桁から回復後、摂食訓練を開始し、ADLの拡大ができた2事例を紹介る。
【方法】クリティカルパスを使用して医療チームで関わり段階的な摂食訓練を実施。
【研究期間】H16年8月~H17年8月
【結果・考察】嚥下訓練は、飲み込みに時間を要したが根気強く接し、他職種の関わりにより  各々の視点から評価できた事がステップアップの要因となった。クリティカルパスを使用しチームで方向性を統一した結果、患者のADL拡大、QOL向上につながった。
【結論】摂食 嚥下の残存機能が認められる時期のアプローチは効果的である。

筋萎縮性側索硬化症(ALS)の嚥下障害に対する独自の食事基準を施行して
~問題点と今後の展望~

国立病院機構高松東病院 栄養管理室
鎌田裕子
国立病院機構高松東病院 栄養管理室,神経内科,リハビリテーション科 *国立療養所大島青松園 内科 
濱端直樹,和田博子,市原典子,三好まみ,*市原新一郎

ALS用嚥下障害食の提供を開始してから現在に至るまでの実際の食事提供内容を整理し,検討した.
平成14年4月から現在までに,嚥下障害食を提供した患者数はALS患者30名、ALS以外の患者16名であった.ALS患者は嚥下障害をきたす他疾患に比べ,知能や感覚の低下がないため,食事形態に関する情報を患者から直接聞くことができた.その反面,より細かい個人対応が必要となり,食事基準の細分化の必要性も示唆される結果となった.
今後の対策としては,ALSは経口摂取できる期間が限られており,また進行が早く頚部筋力低下や呼吸筋麻痺を合併することからも,少しでも長く安全に経口摂取できるためには個別対応が欠かせない.そういった疾患の特異性を考えると,ただ食事基準を今以上に細分化するのではなく,調理方法の検討を行いできるだけ作業を効率化することで,個別対応に費やせる時間を作ることがより有用ではないかと考える.

筋萎縮性側索硬化症の嚥下障害に対する口腔期訓練の効果

国立病院機構高松東病院
市原典子
*同リハビリテーション科 言語聴覚士 **国立病院機構徳島病院 臨床研究部 ***国立病院機構松江病院 神経内科
藤井正吾,*三好まみ,**野崎園子,***石田 玄,

本研究の目的は,ALSの嚥下障害における口腔期訓練の有効性を判定することである.対象は口腔期に障害があるが経口摂取が可能なALS患者6名(男性3名,女性3名).直前の訓練(開口訓練,舌,口唇,頬のマッサ-ジ)有りと無し場合で,各10回ずつ,機能評価(舌・口唇の動きや開口幅など),検査食品(離乳食用のせんべい1枚)の摂取状況評価(口腔内残留の有無や摂取時間,食べやすさなど)をおこなった.機能に関しては,舌運動の有意な改善が3名,開口運動の有意な改善が3名であったが,口唇の運動の改善は1名のみであった.摂取時間に関しては,2名が判定不能であったが,他の4名のうち2名で有意な短縮を認め,他の2名も短縮傾向を認めた.自覚症状については3名で改善を認めた.6例全例で何らの効果を認めたが,訓練効果が低いと思われた2症例は嚥下の重症度が低い症例であり,より進行期の障害で口腔期訓練が有効と思われた.

ALSにおける胃瘻造設時の呼吸機能について

国立精神神経センター国府台病院
寄本恵輔
国立精神神経センター国府台病院リハビリテーション科, 1)同神経内科
黒田昌寿1),秋吉直樹,根本英明1),岩村秀晃1),西宮仁1),湯浅龍彦1)

ALS患者における胃瘻造設において、日本神経学会では努力性肺活量60%以上ある時に造設することが推奨されている。しかし、実際の胃瘻造設時期の呼吸機能についてはあまり議論されていない。そこで、当院では胃瘻造設時期の呼吸機能について調査したので報告する。

呼吸器導入が先行したALS患者における胃瘻造設の時期について

国立精神神経センター国府台病院
黒田昌寿
国立精神神経センター国府台病院
寄本恵輔,岩村晃秀,根本英明,藤田浩司,坂本崇,湯浅龍彦

日本神経学会のALS治療ガイドラインでは、胃瘻造設の時期について、呼吸機能は%FVCで50%を基準に考えると提唱している。
今回、我々は呼吸筋麻痺が比較的急速に進行し、胃瘻造設に先行して呼吸器を導入した症例を経験した。そのような場合、現状では胃瘻造設時期についてガイドラインのような明確な導入基準が存在しない。しかし誤嚥性肺炎など合併症の発生も鑑みて、合理的な基準として何を指標とすべきか、問題提起も含めて症例提示を行う。

喉頭気管分離術を施行した神経筋難病患者における栄養摂取状況および栄養状態の変化

国立病院機構 熊本再春荘病院
内野克尚
国立病院機構 熊本再春荘病院
箕田修治,菅 智宏,石原大二郎,山口喜久雄,今村重洋

【目的】喉頭気管分離術を施行した神経筋難病患者の手術前後における栄養摂取状況および栄養状態の変化を明らかにする.
【対象・方法】著明な嚥下障害を有し, 発声機能回復見込みのない本院入院または在宅療養中の神経難病患者で喉頭気管分離術を施行した14症例 (ALS 5例を含む)に対して, 手術前後における栄養摂取状況や満足度の変化および栄養状態の変化を血液生化学的に検討した.
【結果】6例では誤嚥の心配なく全量経口摂取が可能となり, 5例では一部だが経口摂取可能となった. これらの患者では楽しみができ, 満足度が上がった. 2例においては経口摂取不可であった. 1例については経口摂取からPEGへ変更となった. 多くの症例で喉頭気管分離術後に栄養状態の改善がみられた.
【結論】喉頭気管分離術により経口摂取が可能となり, 患者/家族の満足度の上昇、栄養状態の改善がみられた.

咀嚼訓練による嚥下機能の変化について

国立病院機構鳥取医療センター神経内科
後藤あかね
国立病院機構鳥取医療センター神経内科(金藤大三) 同聴覚言語療法室(熊谷知子,森智美,横田嘉子)
金藤大三 熊谷知子,森智美,横田嘉子

 パーキンソン病およびその関連疾患では進行期に摂食・嚥下障害を来し,ADLの面でも栄養の面でも著しい障害を及ぼすことは既に周知の通りである.この度私達は当院にて加療中のパーキンソン病およびその関連疾患の患者において,咀嚼訓練を行った上でその前後での嚥下状態の変化を評価し分析した.

重症筋無力症患者における嚥下造影検査によるテンシロンテストの効果判定

国立病院機構 刀根山病院 神経内科
田中 尚
1,国立病院機構 徳島病院 臨床研究部 2,国立病院機構 刀根山病院 神経内科
1,野崎園子 2,松村 剛,斎藤利雄,猪山昭徳,藤村晴俊,神野 進

t【目的】嚥下造影検査(VF)を用いたテンシロンテスト(Ttest)の有用性を検討した.
【対象】嚥下障害を有する重症筋無力症(MG)3例,嚥下障害を主訴とするMG疑い5例.
【方法】VFにてTtest前後の嚥下状態を評価した.
【結果】MGでは,2例に不顕性の喉頭侵入・誤嚥を,3例に食物残留を認めたが,Ttest後は改善した.これらの所見は,嚥下訓練や薬物療法の方針を決定する上で有用であった.1例は,胸腺摘出後の後遺症との鑑別ができた.MG疑い例は,全例で不顕性の喉頭侵入・誤嚥と食物残留を認めたが,3例がTtestにより改善し,MGと診断した.1例は,全身症状を欠き,抗AChR抗体が陰性で診断に苦慮したが,後に抗MuSK抗体陽性と判明し,VF所見と合わせ確定診断した.Ttest陰性の2例は,仮性球麻痺と診断した.
【結論】VFによるTtestの効果判定は,嚥下障害を有するMGの診断,治療方針の決定に有用である.ext

「後天的障害児への経口摂食を通してQOL向上を考える」

独立行政法人国立病院機構 南九州病院
柏尾 寿美代
独立行政法人国立病院機構 南九州病院
黒木利恵・石塚次子・矢富恵子・増田みな子・日高香織

「後天的障害児への経口摂取を通してQOL向上を考える」
独立行政法人国立病院機構南九州病院  重心9病棟
柏尾寿美代・黒木梨恵・石塚次子・矢富恵子
増田みな子・日高香織
口から食べることは、人間の基本的営みの一つである。その意義は栄養摂取のみならず食べる楽しみ、生きる喜びになること、脳の活性化、脳機能の維持・回復、諸機能の発達に関係していることは様々な文献で報告されている。今回、胃ろうにて栄養摂取中の後天的障害児のQOL向上になり咀嚼・嚥下機能の発達の促進につながっていくことを目的とし、経口摂取への取り組みを開始した。
 食べることだけが目的でなく本人の楽しみや意欲につながること、他職種との連携をとりながら摂食機能訓練を行うことを家族へ説明したことで家族の協力も得られ訓練を進めていくことができた。現在患児は、「〇〇より△△を食べたい」と意思表示し週1回の訓練を楽しみにし訓練の回数を増やすことを検討中である。摂食機能訓練を行うことで患児の笑顔や意思表示が増え、心身の安定が得られたことは患児にとってQOL向上につながったと考える。

筋強直性ジストロフィー患者の固形物嚥下後の液体嚥下の検討

国立精神・神経センター武蔵病院 神経内科, リハビリテーション科
山本敏之
国立精神・神経センター武蔵病院 神経内科, 同 リハビリテーション科
青木吉嗣, 大矢 寧, 村田美穂, 小林庸子

【目的】筋強直性ジストロフィー(DM1)患者が固形物を嚥下した後の液体嚥下を,嚥下造影(VF)を用いて解析する.
【方法】経口摂取しているDM1患者13人を対象とし,以下の液体嚥下をVFで解析した.第1施行;液体バリウム10mlを嚥下.第2施行;バリウム含コンビーフ8gを嚥下した後,続けて液体バリウム10mlを嚥下.
【結果】第1施行で液体を誤嚥した患者はおらず,第2施行では13人中3人が液体を誤嚥した.固形物嚥下後,喉頭蓋谷と梨状陥凹の両方に固形物の残渣があったのは,誤嚥した3人だけだった.液体の通過時間と嚥下開始のタイミングは,第1施行と第2施行で有意差はなかった.
【考察】一般にDM1患者では咽頭での残渣が多い.梨状陥凹の固形物残渣は,液体が食道へ流入するのを妨害し,誤嚥の危険因子になると考えた.
【結論】梨状陥凹に固形物残渣がある場合にのみ,液体を誤嚥するDM1患者がいることを示した.

嚥下障害と嚥下訓練に対する意識調査

独立行政法人国立病院機構長崎神経医療センター
内海みき子
神経内科 筋ジス北病棟看護部
川島理恵子、福本明美、今里純子、森山志朗、福留隆康神経内科医長、松尾秀徳診療統括部長

【目的】誤嚥の既往のある患者に対し嚥下に関する意識調査を行った。
【方法】入院中の筋ジストロフィー患者7名と脊髄性小脳変性症患者2名を対象とした。嚥下困難の自覚の有無、誤嚥時の対処法および嚥下訓練に対する関心度について調査した。
【結果】嚥下困難の自覚のある者は5名で、ない者は4名だった。誤嚥時に看護師に頼らず自分で対処した者が7名だった。誤嚥時に看護師を呼ばなかった者が2名おり、誤嚥は日常的で軽度と考えていた。嚥下訓練をしらない者は7名で、知っている2名も嚥下訓練は不要と考えていた。
【考察・結論】誤嚥の既往があるにも関わらず嚥下困難の自覚がなく嚥下訓練も不要と考えている患者がいることは、嚥下機能の評価が不十分で誤嚥の危険性も十分に理解できていないと考えられる。症状が軽い場合は自己流に対処できているが、誤嚥性肺炎を併発する危険性が高い。嚥下機能低下をきたす患者に対しては早期に嚥下への関心を高め、嚥下機能の評価を適宜行うと共に、誤嚥時の対処法を指導する必要性がある。