日本神経筋疾患摂食・嚥下・栄養研究会

「年頭所感:日本再生と本研究会の役割」(2013/01)

 我が国で少子高齢化が叫ばれてから久しい。有効な対策もないまま、政治の空白と同様に日本が劣化しつつある。厚労省の統計では60歳以上の認知症の数は全国で300万人を突破したといわれている。有効な認知症対策が求められているのであるが、山積する問題が多岐かつ膨大に及ぶため、局所的、場当たり的な対策ではどうにもならないのが実情である。そうは言っても事態は放置できない所まで来ていて、新たな対策を具体的に実施すべき時に来ている。私は以下の通りに大きく3つの方向で進めて行くべきであると考える。

 

一つは予防医学の面からである。ここでは、脳に生じた認知症は結果であるので、まずもって一般身体的な面からの認知症予防の対策(予防技術の開発)を行うことが焦眉の急と考える。つまり、まず腸管、栄養、心血管(循環)、代謝(メタボ)、筋骨格系(運動)などから健康を見直し、それで健やかな精神と肉体を維持するという考え方である。アンチエージングという考え方もこの流れに沿った考え方である。早い時期から(ある意味小児期から)食事や栄養の問題に関心をもって、予防医学的な見地から認知症に対処して行くべきであるし、我々の研究会もこうした流れに沿って貢献しなければならない。

 

次ぎの課題は、すでに発症した認知症の進展を早期にどう食い止めるかである。これは疾患に特異的な病態を治療、補充、修復、再生する技術であって、現在の医学は主にこの方面に力を注いでいる。その中で取り分け今後に期待出来るのは、再生医療の発展である。唯、認知症をターゲットとした再生医療が今後どういう筋道で発展するかは未だ見通しが立ってはいない。おそらく脳を場とした免疫系を制御する技術の発展と並行して認知症対策に見通しが立ってくるのではなかろうかと考える。本研究会では栄養の側面から腸管免疫といった新たな分野を研究課題に取り上げて進めて行くべきである。

 

第3の課題は、独居高齢者や認知症の人々を社会でどう支えるのかという問題である。これは即ち現代日本そのものの処方箋(青写真)の提案という課題でもある。これには様々な方法があろうが、私は医療の町造りから構想するのがよいと考える。高齢者が安全に暮らせる町の要件を至急整備して、例えば、安全な車、燃えない住宅、森林再生とリンクしたエコ住宅の普及、人々の顔が見える長屋町の再建、医師会を含めた機能的な病診連携(パス)の提案、緩和医療体制の整備などである。つまり文化的で快適な自立する老後を支える町の創生が目標となる。ここでも本研究会の役割は大きく、高齢者の摂食・嚥下問題の解決、高齢者や障害者用の献立の立案、アンチエージング食の提案など広範である。

 

今後日本を支えるには全国の中核都市(人口20万都市)の自立が要となる。それらがお互いに連携し、助け合い(同盟)、また良い意味で競い合って、人々が最後まで活き活きと暮らせる新たな都市(故郷)を作って行く、そこに日本の活路が開けると信じるのである。

 

平成25年1月

 

鎌ヶ谷総合病院 難病脳内科

湯浅龍彦