日本神経筋疾患摂食・嚥下・栄養研究会

「神経筋疾患の摂食・嚥下による疲労に対しての看護」(2014/03)

 神経筋疾患は徐々に障害が進行するため,自力で食事摂取ができている患者でも,いつの頃からか呼吸機能や嚥下機能,摂食動作の障害のために食事の途中から疲れるようになります.そして,食事中の疲労のために,食事時間が長くなり,食事摂取量は減少します.

食事摂取量が減少すると患者は低栄養を招きやすくなります.

 食事中の観察ポイントは,食事摂取時間が長くなっていないか,食事中に眠気や意識の変動がみられないか,食物を口腔に運ぶペースが極端に遅くなっていないか,食べこぼしは増えていないか,座位での姿勢が崩れていないかなどをみます.また,「食べ物の嗜好が変わった」と思われる患者には,摂食中の疲労を避けるため,食べやすい食事を好むようになる場合もあります.他にも,食事開始時と食事の後半とで食べるスピードが遅くなっていったり,むせが多くなったりする患者は,摂食による疲労を生じている可能性があります.普段から患者に関わる看護師や介護士が患者の食事の様子を観察し,状態を把握することが大切です.

 摂食による疲労を軽減する対処として,ムース食やソフト食のような咀嚼力のほとんど不要な嚥下しやすい食形態の調整を行い,食事摂取量を確保します.食事摂取量が減少している場合は,早目に人工栄養剤の活用や間食を取り入れ,一日の栄養摂取量を増やすことを考えます.また,テーブルの高さの調整や摂取しやすい食具の工夫,ポジショニングの調整を行い,入浴直後や運動機能訓練直後など疲れやすい時間を避けて食事をします.食事介助を行うときは,食事摂取の開始時から介助するのではなく,食事摂取の途中から介助に入り,食事摂取量を確保します.患者が自力摂取できることに対して意欲を尊重し,自尊心を傷つけないように配慮します.

 患者に関わる看護師や介護士は,患者が摂食による疲労を生じていないか観察し,患者やその家族と一緒に疲労を軽減する方法を検討します.患者に合った方法が提供できるように,患者やその家族の思いに寄り添う気持ちをもつことが大切です.

独立行政法人国立精神神経医療研究センター病院 看護部 
臼井晴美