日本神経筋疾患摂食・嚥下・栄養研究会

処方薬の口腔・咽頭内残薬について(2016/08)

内服治療において、口腔・咽頭内残薬は治療効果や効果判定に影響を及ぼす。しかし、患者自身の残薬の自覚が少なく、また、介助者も気づきにくいことが多い。われわれは、口腔・咽頭内残薬に注目し、残薬のある患者群とない患者群の、服薬時の臨床所見・患者背景を比較検討した(JSPS科研費 No.25350694)。対象は摂食嚥下障害認定士が服薬困難ありとした60歳以上の高齢者(223名)。臨床的観察で口腔・咽頭内残薬を認めた患者群(n=115)と認めない患者群(n=108)において、服薬時の所見、嚥下障害のスクリーニングテスト、背景疾患、介護度、平素の食形態、残薬の剤形、服薬方法を比較検討した。患者は口腔・咽頭内残薬としての自覚がないこともあるが 、水やゼリーで何度も流し込む ・服薬時のむせがある に両群の有意差を認めた。また、錠剤・カプセル・OD錠・散剤のどの剤形でも残薬が認められた。
ある医療職の研修会で、残薬を発見したことがあるかを尋ねたところ、ほぼ全員があると答えたが、医師へのフィードバックは必ずしもなされていないとのことであった。処方医と医療職の連携により、残薬の早期発見と早期対策をおこなうことは、確実な内服薬治療につながる。われわれ医師には常に他の医療職と連携して、口腔・咽頭内残薬の情報をキャッチする姿勢が求められる。

関西労災病院 神経内科 野﨑園子