日本神経筋疾患摂食・嚥下・栄養研究会

前舌保持嚥下法(2010/02)

 前舌保持嚥下法(Tongue-Hold Swallow:以下THS)は、別名Masako法と言い,1996年にFujiuらによって嚥下咽頭期の嚥下圧生成源となる舌根部と咽頭後壁の接触不全に対し、咽頭後壁隆起を増大させる訓練法として提唱されました。前舌を軽く噛んだまま空嚥下をするだけの時間や場所を問わず実施できる手軽な訓練手技です(図 参照)。患者さんに指導すれば,自宅で自主トレーニング法として活用することができます。これまで,疾患に対する治療法として確立されるには至っておりませんでしたが,2010年倉智により、舌運動の改善にも寄与する可能性が示唆されました。当院では廃用性変化で嚥下障害をきたした症例に施行して,嚥下機能の改善を認めています(嚥下医学会にて報告2010.2)。昨年,ご紹介したLSVT等と共に舌筋の筋力トレーニングの一つとして見直されつつあります。ちなみにMasakoは倉智先生です。

 

参考文献
1) Fujiu M, Logemann JA :Effect of a tongue-holding maneuver onposteriorpharyngeal wall movement during deglutition. American journal ofSpeech-LanguagePathology 5:23-30, 1996
2) Fujiu M, Logemann JA, Pauloski BR: Increased postoperative posteriorpharyngealwall movement in patients with anterior oral cancer: Preliminaryfindings and possibleimplication for treatment. American journal of Speech-Language Pathology 4:24-30,1995
3) 倉智雅子:前舌保持嚥下法のEBM.言語聴覚研究7巻.印刷中.

 

京都第一赤十字病院 神経内科

巨島文子