日本神経筋疾患摂食・嚥下・栄養研究会

医療職から見た服薬困難(2016/03)

薬の内服は、食物摂取と同様に口から取り込むものであり、服薬困難は、療養中の患者さんにとって、薬の効果判定や服薬アドヒアランスに影響を与える重要な医療的ケアである。
私たちは日本学術振興会 平成25-27年度科学研究費助成事業「要介護高齢者の嚥下障害と服薬方法に関する研究」の結果(報告書作成中)をふまえてパンフレットを配布し、摂食嚥下障害の専門的知識を持った医療職(390名)に服薬困難に関するアンケートをおこなった。
服薬困難は、普通食を食べている患者でも、服薬が自立している患者でもおこりうること、剤形によらず服薬困難があることを、口腔内・咽頭内に、内服薬が残っていることを発見したことがあるが、それに気づかれないことが日常診療で少なくないことについて、多くの医療職が認識していた。
医療職から見た服薬のしやすさのポイントで多くの賛同が得られたのは、「のどを通りやすいこと」や「一度にのむ薬の量が少ないこと」であったが、「口の中で溶ける」「つまみやすい」「 錠剤が転がりにくい」については意見が分かれた。特に口腔内崩壊錠については、服薬しやすさについての認識が分かれており、今後さらなる情報交換が必要と思われる。これらは、患者自身の評価についても調査が必要であるが、残薬などへの患者の自覚は乏しい場合も少なくなく、注意深い医療職の観察が必要と考えられた。
患者の服薬困難について、医師との処方内容の相談状況を尋ねたところ、薬の大きさや剤形、処方量については比較的意見交換ができているが、服薬時間帯変更や経管など投与ルート変更については、必ずしも相談されているわけではなかった。患者さん側は服薬困難について医師にあまり訴えないという傾向もあり、医師は服薬困難について積極的に情報収集する必要がある。処方医と医療職の連携によって、よりよい服薬環境を構築する努力が求められる。

兵庫医療大学

野﨑園子