日本神経筋疾患摂食・嚥下・栄養研究会

呼気筋力強化訓練の嚥下機能に対する影響(2009/11)

 咳は繊毛運動とともに気道クリアランスを高める。吸気に続く急速な声帯内転と腹筋を含む呼気筋の収縮が咳を生み出し、高速度の呼気流を作り出す。最近の呼気筋力強化訓練(EMST)の報告では、神経疾患、高齢者、プロの歌手や若い健常人などで呼気力増強効果が示されている。Chest 2009;135;1301-1308の論文によれば、EMST装置(EMST 150; Aspire Products; Gainesville, FL)によって4週間、計100回の呼気訓練を行った10名のパーキンソン病患者で呼気圧と呼気流量の増加、さらに喉頭進入/誤嚥スコアの明らかな改善がみられた。EMST装置では、機械的に呼気筋にオーバーロードするよう調整された一方向のばね式弁が用いられ、充分な呼気圧が発生するまで弁は空気を通過させない仕組みになっている。EMST装置はまだ日本では入手困難だが、訓練の設定が決まれば、施設でも在宅でも一定の負荷で訓練できる点が、大変魅力的である。

 

兵庫医療大学 リハビリテーション学部

野﨑園子