咀嚼検査について(2025/09)
食品をかみ砕くことを咀嚼(そしゃく)といいます.歯科ではこの咀嚼機能を精密に検査する方法があり,日常診療で口腔機能低下症の診断や義歯の質の評価を目的として実施しています.
かつては,ピーナッツや人参などを咀嚼してもらい,それを口腔外へ吐き出し,複数の異なる網目サイズの篩に通して咀嚼機能の評価を行っていました(篩分法).
最近では,検査専用のグミゼリーを一定時間患者さんに咀嚼してもらい,客観的に評価する方法を行っています.2種類に大別され,いずれも咀嚼したグミゼリーを口腔外へ吐き出すこととなりますが,一つはグルコース含有グミゼリーを咀嚼させ,咀嚼後にグミゼリーを水分とともに吐き出し,水分中のグルコース濃度を専用機器で計測する方法です(chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.gc.dental/japan/g-zone/assets/data/catalog/glcosenserGS2_pamphlet_100.pdf).もう一つは咀嚼能率スコア法といって,咀嚼で粉砕されたゼリーの粒子の細かさを携帯やタブレットにいれたアプリで画像評価します(https://www.uha-sosyakugumi.com/).最近はさらに簡便な方法として,咀嚼能力を評価できるキシリトール咀嚼チェックガムと専用アプリ(https://www.lotte.co.jp/kamukoto/mouth/1792/)もあります.
咀嚼とは,食べ物を口の中で歯や舌、顎の筋肉を使ってかみ砕き、唾液と混ぜ合わせて、飲み込みやすい状態にすることです.この一連の動きは,単に食物を細かくするだけでなく,消化吸収や全身の健康に欠かせない重要な役割を担っています.神経筋疾患の患者さんでは,舌運動や舌圧,顎の筋力が低下してくる方もおられます.「硬いものが咬みにくい」といった症状があった場合,例えば,キシリトール咀嚼チェックガムならば歯科医療従事者でなくても,誰もが簡単に咀嚼の能力を測ることが出来,対象は成人からガムがかめる子どもまで幅広く利用いただけます.また,ガム自体は咀嚼機能低下や口腔乾燥に関するリハビリテーションにも応用可能です.今回は,口の機能の一端を担う「咀嚼」機能の評価方法についてご紹介しました.
広島大学大学院医系科学研究科先端歯科補綴学 吉川峰加