日本神経筋疾患摂食・嚥下・栄養研究会

摂食嚥下障害と薬剤選択の課題(2023/08)

2025年の超高齢社会に向けて、医療の機能分化から在宅医療の推進を転換していくことが課題である。「病院から在宅」への移行が明確に示された現在、摂食嚥下障害がある方においても生活を見据えた多職種との協働・連携マネジメント能力が看護師には求められている。

我が国の摂食嚥下訓練は脳卒中を中心で発展してきた。近年では、脳卒中の嚥下訓練を応用して、脳卒中以外の疾患が原因で生じた摂食嚥下障害に対して訓練を行うようになった。神経変性疾患をはじめ、悪性新生物、器質的疾患などの原因により嚥下動態は多岐にわたる。その背景から、嚥下障害がある方は様々な病態が存在し、また生活習慣病などの複数の疾患を合併していることが多い。また、複数の疾患により多種類の薬が処方され内服していることも多い。

神経疾患の進行に伴い、難治性嚥下障害となり、薬物療法を余儀なくされ、多剤で剤形も多様で服薬困難に陥りやすい。例えば、口腔内崩壊錠(以下、OD錠とする)は患者の「飲みやすさ」を考えて開発された。しかし、OD錠は口腔や咽頭で安易に溶解できるが、正常な嚥下は必須条件である。医療関係者側は薬剤を確実に投与したい、また、患者側は内服しないといけないと思っている。在宅では、想像を絶するよう内服できなかった量の薬がしばしば残っており、薬の調整を在宅医と検討している。病院から在宅に向けた退院支援が遂行している中、確実に薬が投与できる剤形や内服する手段を検討していく必要がある。

摂食嚥下障害がある方は病院だけで解決するものではなく、治療や嚥下評価を基盤とした薬剤の開発、生活支援の視点を考慮した在宅療養支援に繋げていければ幸いである。

医療法人道器 訪問看護ステーションつばめ

下條 美佳