日本神経筋疾患摂食・嚥下・栄養研究会

神経筋疾患患者を入院から退院後までシームレスに介入する取り組み(2023/10)

神経筋疾患は疾患の進行と共に摂食嚥下機能・口腔機能が低下し,二次性のサルコペニアや廃用を伴うことで.誤嚥性肺炎発症のリスクが高まることが知られています。そのため,継続した摂食嚥下評価や口腔管理が望まれますが,病院と地域との連携が不十分である地域は少なくないと感じています。特に,地方でその傾向が強く,当院でも入院中は食支援・栄養管理を行うことで肺炎発症なく退院しますが,誤嚥性肺炎や低栄養・脱水で再入院を繰り返す患者が散見されました。そこで当院では,入院から退院後までシームレスに介入する,以下のような取り組みを開始しましたのでご紹介します。

1) 「口腔管理・食支援センター」の設立と「嚥下パス入院」の導入

当院では2020年より,歯科が入院中・退院後の食支援・摂食嚥下リハビリテーション・口腔管理を行っていました。しかし,歯科との標榜では従来のように「歯を治療する」イメージが強いため,病院内・外に向けて摂食嚥下リハビリテーションの窓口を明確にすることを目的に,2023年7月に「口腔管理・食支援センター」を設立しました1)。当センターの特徴は以下です。

①「食」に関する多職種が所属し,密に連携しながら専門的な検査,診断,訓練を実施し,入院中はもちろんのこと,退院後の栄養管理を考慮した最適な方針を検討

②「歯科」が入院中・退院後に介入し口腔管理を徹底することで,誤嚥性肺炎および全身への有害事象を低減

③摂食嚥下機能評価および集中的な訓練・代償法の検討が必要な方,明らかに栄養が効率的に充足できない方を対象に2週間短期入院「嚥下パス入院」の導入

特に,神経筋疾患では疾患の進行とともに,摂食嚥下機能と食形態が乖離し,窒息・誤嚥性肺炎・低栄養のリスクが高くなるため,「嚥下パス入院」にて定期的に摂食嚥下機能・栄養状態を再評価し,適した食形態や栄養摂取方法を提案しています。

 

2) 「訪問歯科診療」の開始

2022年8月より,摂食嚥下リハビリテーションに限って訪問歯科診療を開始しました。先述の再入院率にも繋がりますが,この背景には岐阜県では訪問で摂食嚥下リハビリテーションを実施している医療者,歯科医療者が著しく不足していることが挙げられます。そのため,地域歯科医師会と連携し,普段の口腔管理や症状が安定している方の食支援は歯科医師会の先生方にお願いし,当院では定期的な摂食嚥下機能評価で介入しています。

今後は地域と協力し,知識や技術をボトムアップしながら,地域全体で神経筋疾患患者,摂食嚥下障害患者をフォローできるシステムの構築を推進したいと思います。

1) 朝日大学病院  口腔管理・食支援センターHP:

https://www.hosp.asahi-u.ac.jp/shinryo/oralcarecenter/

朝日大学歯学部 摂食嚥下リハビリテーション学分野

朝日大学病院 口腔管理・食支援センター

谷口 裕重