日本神経筋疾患摂食・嚥下・栄養研究会

神経筋疾患症例で認知の問題がある場合の対応の工夫(2018/09)

神経筋疾患症例の生活を支える対応では、摂食の安全性への配慮の上に進行する症状への配慮を行いながらアプローチを進めます。
神経筋疾患による摂食嚥下機能の低下に加え、年齢を重ねることで認知の問題が起こることは少なくありません。今回は、摂食場面で起こる認知の問題への対応として、工夫できるものを紹介致します。
まず、対応上必要な着眼点、留意点として、視覚的な問題、聴覚(老人性難聴)への対応など入力の保障を確実にすることが大切です。入力の問題の一つである加齢性(老人性)難聴は40歳代から始まるといわれていますが、65歳以上で難聴がある人は全国で1500万人といわれており、多くの対象者に起こりえる症状です。日常の会話で聞き返しがある、少し大きめの声にすると通じるといった場合は軽度の難聴が疑われます。補聴器を装用ほどではない場合でも、顔を見てはっきり、ゆっくりと話し、伝わっているかどうかを確認しながらコミュニケーションを進めましょう。視覚的な問題は食物を認知しにくくすることや、摂食動作がしにくいことにつながることがあります。また、手指の操作性が低下してお椀を持ちにくい場合には、取っ手のある汁椀にするなど、図に示すような配慮で少しでも問題を減らすことができる場合があります。
次に、食べることの意識付けがしにくいために、食べ始められない、途中で止まってしまうという状況になることがあります。その際は、声を掛けて説明すること、献立を見せること、食器やスプーンを持つ手を介助して口へ入れるよう導くこと、本人の使いなれた食器を用いることなどが奏功することがあります。また、食事の始めに好物を用いるとスムースになる場合もあります。
いずれにしても、口腔に詰め込んで窒息を起こすことや、多すぎる一口量の水分でむせを起こすなど、咽頭期の嚥下にトラブルを起こさないよう留意しながら摂食を進めます。少しの工夫によってご本人の食べる意欲を促し、美味しいと感じられる食事を増やせる場面がありますので、実践をしてみてください!

埼玉県総合リハビリテーションセンター
言語聴覚科 清水充子

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