日本神経筋疾患摂食・嚥下・栄養研究会

輪状咽頭筋切断術の新手法:CP-POEM(2026/02)

神経筋疾患患者において咽頭収縮力の減弱、輪状咽頭筋の弛緩不全による食道入口部開大不全は嚥下障害や誤嚥性肺炎を生じる主原因となる。外科治療としての輪状咽頭筋切断術(以下CPM : cricopharyngeal myotomy)には以下の方法がある。

①頸部外切開法

②経口的輪状咽頭筋切断術(経口的CPM): 経口で硬性直達鏡とレーザー手術1)

小生らはさらに②を改良し

③経口的内視鏡下輪状咽頭筋切断術(CP-POEM; Cricopharyngeal Per Oral Endoscopic Myotomy):経口で彎曲喉頭鏡と上部消化管内視鏡手術2)

を行っている。経口手術で低侵襲かつ筋切断が確実な方法であり、全身状態が良好とは言えない神経筋疾患患者において有用な方法と考えている。

従来の経口的CPMの限界

従来の②は直管状の硬性鏡を用いるため、頸椎の可動域制限や開口障害がある患者には手術が困難であった。また術野が狭く、粘膜ごと筋層を切断する全層切断となるため、止血困難な術中出血や筋層が十分切断できない等のリスクがあった。

CP-POEMの手法とメリット

CP-POEMは彎曲喉頭鏡を経口挿入し、上部消化管内視鏡で食道粘膜下にトンネルを作成し、輪状咽頭筋を切断する術式である。小生らは消化器内科との合同手術としている。

1.優れた術野と操作性:

②では手術困難な症例でも③では広い手術空間を確保できる。さらに高精度な内視鏡モニターで手術目標の輪状咽頭筋や危険な血管を確認できるため、レーザーによる盲目的切断に比べてより確実な切断や止血が可能で、止血用デバイスも豊富である。

2.粘膜下層への安全なアプローチ:

食道入口部近傍で入り口を作り、粘膜と筋層を分離した粘膜下トンネルを作成して内視鏡を進める。これにより、粘膜の完全性を保ちつつ血管を避け、術中の出血を抑えることが可能である。

3.創部閉鎖の工夫

海外の報告では創部閉鎖にクリッピングを使用しているが、小生らはクリップの誤嚥を防ぐため縫合している。

結語

彎曲喉頭鏡と上部消化管内視鏡を組み合わせたCP-POEMは、従来の経口的CPMの弱点を克服した低侵襲治療の手法と思われる。全身状態が良好とはいえない神経筋疾患患者の福音となれば幸いである。

文献

1)嚥下手術・私の術式-経口的輪状咽頭筋切断術.河本勝之.嚥下医学4(2);155-157, 2015.

2)新しい経口的内視鏡下輪状咽頭筋切断術(CP-POEM)―上部消化管内視鏡を使用した経口的手術―.

河本勝之他.嚥下医学13: 189-195, 2024.

淡海ふれあい病院 摂食嚥下センター

淡海医療センター 頭頸部甲状腺外科センター

河本 勝之