日本神経筋疾患摂食・嚥下・栄養研究会

進化する嚥下動態解析(2010/05)

 臨床で用いられている嚥下動態検査は、おもに嚥下造影と嚥下内視鏡である。一方、呼吸と嚥下の関係は、呼吸曲線と嚥下音や筋電図などの嚥下動態解析の同時記録で行われている。
 画像診断は、いまや3次元(3D)イメージングの世代になりつつあるが、320列面検出器型CTでは、嚥下動態評価において3D描写と運動力学分析が同時に行える。3Dイメージは嚥下に関係する構造をよりリアルに描出し、多相イメージは嚥下の口腔期から早期食道期までの運動力学的分析を同時に可能にした。
 この3Dイメージの連続再生によって、嚥下運動中の気道防御機構について、新たな知見が得られつつある。つまり、さまざまな角度より(1) 舌骨の挙上、(2)食道入口部の開大、(3)披裂筋と真の声帯閉鎖による喉頭閉鎖 (4)喉頭蓋反転の動きの時間的解析を同時おこなうことができる。6名の健常人では、時間的解析では (1)(4)(2)(3)の順に起こることが多く、(3)の喉頭閉鎖は舌骨挙上の最中に、喉頭蓋最大逆転は舌骨最大の挙上のあとに観察された。
 被爆量の問題なども改善されつつあると聞く。今後期待される解析方法のひとつである。
文献[E pub ahead of print]
 1) Evaluation of Swallowing Using 320-Detector-Row Multislice CT. PartI: Single-and Multiphase Volume Scanning for Three-dimensionalMorphological and KinematicAnalysis.
Dysphagia DOI 10.1007/s00455-009-9268-2(Published Online: 2010 Jan 20)
 2) Evaluation of Swallowing Using 320-detector-row Multislice CT. PartII:Kinematic Analysis of Laryngeal Closure during Normal Swallowing.Dysphagia DOI 10.1007/s00455-010-9276-2 (Published Online: 2010 Mar 5)

 

図:正常嚥下運動の3D-320列面検出器型CT像

(文献2)より)

側面(上段)、後面(中段)、下面(下段)

灰色は骨、青は気道表面、黄色は造影剤を示す。

矢印は真の声帯が閉鎖しているところ